NOVEL,刀剣乱舞,短編

 夜遅くまで薬を調合していたせいで、眠気が酷い。ただ、決して初めてのしんどさではない。前の晩に重傷者が大量に運び込まれてきたときと比べれば、寧ろしんどくないとさえ言える方だ。
 薬研藤四郎は、白衣の裾をふわふわと揺らして欠伸を ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

★注意(必読)★
・捏造要素過多
・闇堕ち表現あり
・刀剣男士同士の戦いあり
・本能寺爆発説を採用

 ――――?年?月?日。
 火の爆ぜる音がする。焦げて、支えが利かなくなった天井の ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 障子の木枠を叩く音がする。溜息を吐いて、今まさに開封しようとしていた甘酒の瓶を文机の上に置き、重い腰を上げた。何気なく壁にかかる小規模の時計を見やって、いつもより早いなと思う。身構えながら、障子を開けた。
 ―――瞬間、目と ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

「甘えるってどうやるんだ」
「あなたは相談相手を間違えていると思うよ」

 真剣な顔で放たれた言葉に、僕は思わずそう返していた。燭台切さんが剥いてくれた柿と、一緒に渡して貰った緑茶を、目の前で頭を抱えて突っ伏す薬研に ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 あいつは俺を嫌っている。

 別に何をしたわけじゃない。ただ、幾千もの戦いを経てたどり着いた先で、それこそ死ぬほど探し求めていた短刀を見つけたのは俺だった。一目で、それが「不動行光」であるに気付いた。
 普段は粟田 ...

刀剣嫌いな少年の話

 布団の脇に座って、手を握り続ける。願うような気持ちで、じっと動かない。
 目に見えた穢れはなくなり、傷もなくなった。部屋の隅に置いてある刀掛けを見やれば、手入れが終わった打刀と脇差があるのが分かる。

 何度確認し ...

刀剣嫌いな少年の話

 稀少な刀を収集して、自慢する。太鼓鐘貞宗という短刀が確認された時点で、前任の審神者が執拗に求めたのは、当然の現象だった。

『〝貞ちゃん〟に会いたいと思わないか、燭台切』

 ろくに手入れもされていない体のまま、 ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 記憶喪失という病気がある。
 物理的に、あるいは精神的に大きな衝撃を受けたときに発症したり、何か重い病気のせいで併発したり……まあ、原因は色々考えられるらしいが、それまでの自分のことも、周りのことも忘れてしまう病気だと言う。 ...

刀剣嫌いな少年の話

『ごめんな、みっちゃん』
『■■■■■』

 ――貞ちゃん……

   ***

 目を開けたら、布団の上にいた。何故布団に入っているのか分からなくて、一度気持ちを落ち着かせるために、意味も無く天 ...

刀剣嫌いな少年の話

 ――パリン。

 申し訳なさそうな顔で正座している眼帯男。その男の前には、綺麗に中央から放射状に分かれてしまった皿が一枚、置かれている。

「本当にごめんなさい」
「皿一枚ごときでしおらしすぎて逆に怖い」 ...