刀剣嫌いな少年の話

 本当はどこかで気が付いていた。

 あの子供が、今更政府が要求してきたからと言って、全員に演練に来てくれと頼むわけがないことくらい。あの子供なら、たとえ本当に政府が要求してきたとしても、言うはずなのだ。

 所詮 ...

刀剣嫌いな少年の話

 ――襲撃された本丸が静かになってからも、黒い管狐はただ必死に、審神者たちから託された少年を護らなければと、必死に霊力を込めて結界を維持し続けていた。
 政府直属の部隊が応援にやってきたのは、クロが霊力を使い果たして結界が解け ...

刀剣嫌いな少年の話

『おー! ひょっと、おんしゃあが噂の〝坊〟か!?』

 大きな声を聞いて、子供は体を震わせた。
 慌てて周囲を見回し、傍の空き部屋に入り込むと、そっと顔だけ廊下に出した。向かいから歩いてきた刀剣男士は、長い襟足を揺ら ...

刀剣嫌いな少年の話

 刀剣男士は消耗品だ。

 あの男は、そう言った。
 俺を拾ってくれた人だったから、ずっと恩を感じていたけど、多分初めての喧嘩をしたきっかけになった言葉だ。……今思うと、怒ってたのは俺ばっかりで、爺さんはひたすら俺を ...

刀剣嫌いな少年の話

こんにちは、トトです。

10月に更新すると言っていたのに、11月になってしまい本当に失礼いたしました……Wi-Fiが壊れたり色々ありまして……いえ、スケジュール管理が甘かったのも確かだと思います。11月ぎりぎり間に合いまし ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 いつもと同じ時間に目が覚めた。働かない頭。しかし、慣れきってしまった「人」としての体は、一日の始まりを何の違和感もなく受け入れ、何も考えずとも動き出してくれる。起き上がって、どうせ目なんて覚めやしないのに、何度も頭を振った。くあり、 ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

「ふざけてんのか! もういっぺん言ってみろ不動!!」
「うるせぇいい加減にしろよ! 出て行け!!!」

 安穏とした昼下がり。突然、本丸の屋根が吹っ飛ぶような声が迸り、自由に過ごしていた刀剣達は弾かれたように動き出し ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 顔面蒼白になった審神者の前で、からりと笑い手を挙げたのは、今回第一部隊の隊長を務めた鶴丸国永だ。彼の特徴といえば全身の真っ白な、まさに「鶴」と言えるような容姿であるが、今はお世辞にも「白」とは言い難かった。体中の至る所から血が流れ落 ...