創作小説,短編

 てん、てんという手鞠をつく音に、雀達は耳を傾けていた。毎日この昼頃に、少女が中庭に来て、この音を生む。これが彼らにとって心地良いものなのかは分からないが、どうしてか雀達はこのとき、中庭の池に集まるのだ。
 少女はとりわけ楽し ...

創作小説,短編

 故郷で作られた小さな万華鏡を見下ろす。
 表面は赤い布で覆われ、比較的地味なデザインだった。ただ、ピンク色の小さなビーズが花の形に並べられている部分だけが、他の部分とは不釣合いで、大した事もないのに派手と錯覚させられるほどだ ...

刀剣嫌いな少年の話

 冬の太陽ほど、そっけなく、あっけなく落ちていくものはない。
 全体が闇夜に沈んだのはもう随分前だった。

 審神者の部屋の中にある時計は、審神者が代わってもなお、かつてと変わらず正しく時を刻んでいた。

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刀剣嫌いな少年の話

 本丸の大広間には、最初に本丸で刀剣男士らに挨拶をするために、集まってもらったことがある。つまりは、一応ここの刀剣男士にとって、大広間は集まること自体に抵抗はないらしかった。
 それならば今も、あの大広間は審神者を認めない刀剣 ...

DQ,NOVEL,短編

「テリー、ブラック?」
 看板で散々宣伝している自家製パンとやらを千切って口に運んで、洋風茶碗マグカップを手にしたところで顔を覗き込まれて、驚く。だが、すぐに驚く必要はないじゃないかと思い直して、表情を改めた。もう自分は、一人 ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 夜遅くまで薬を調合していたせいで、眠気が酷い。ただ、決して初めてのしんどさではない。前の晩に重傷者が大量に運び込まれてきたときと比べれば、寧ろしんどくないとさえ言える方だ。
 薬研藤四郎は、白衣の裾をふわふわと揺らして欠伸を ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

★注意(必読)★
・捏造要素過多
・闇堕ち表現あり
・刀剣男士同士の戦いあり
・本能寺爆発説を採用

 ――――?年?月?日。
 火の爆ぜる音がする。焦げて、支えが利かなくなった天井の ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 障子の木枠を叩く音がする。溜息を吐いて、今まさに開封しようとしていた甘酒の瓶を文机の上に置き、重い腰を上げた。何気なく壁にかかる小規模の時計を見やって、いつもより早いなと思う。身構えながら、障子を開けた。
 ―――瞬間、目と ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

「甘えるってどうやるんだ」
「あなたは相談相手を間違えていると思うよ」

 真剣な顔で放たれた言葉に、僕は思わずそう返していた。燭台切さんが剥いてくれた柿と、一緒に渡して貰った緑茶を、目の前で頭を抱えて突っ伏す薬研に ...

NOVEL,刀剣乱舞,短編

 あいつは俺を嫌っている。

 別に何をしたわけじゃない。ただ、幾千もの戦いを経てたどり着いた先で、それこそ死ぬほど探し求めていた短刀を見つけたのは俺だった。一目で、それが「不動行光」であるに気付いた。
 普段は粟田 ...